ジェイコブ

仁義なき戦い 広島死闘篇のジェイコブのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
4.2
舞台は朝鮮戦争の頃の広島。賭博場で傷害事件を起こし、服役した山中正治。山中は2年の刑期を終えて出所するも、無一文故に無銭飲食を働いた所を後の大友組組長大友勝利とその一味に咎められ、集団リンチを受ける。店の店員として働いていた村岡組組長の姪である上原靖子に助けられ、村岡の元に身を寄せることとなる。大友達への復讐の機会を伺っていた山中だったが、ふとしたきっかけで靖子と男女の関係となり、組を追い出されてしまう。その頃、日に日に勢力を強める村岡組に不満を持っていた勝利達は、村岡組との抗争を目論んでいた……。
深作欣二監督の仁義なき戦いシリーズの第二弾。前作の主人公であった菅原文太演じる広能は獄中の山中を助けた縁から、山中の恩人として登場する。広能は数人の組員と共に広能組を立ち上げているが、日々の食事に困るほどの困窮ぶり。子分に肉を買わせようとするが、子分は広能に内緒で近くの野良犬を捕まえてその日の食事にする。広能が飼ってる犬に肉を食べさせようとしたら、犬が敵意剥き出しで見てくるから、それが発覚するという何とも間抜けな一幕がおかしい笑。
本作はヤクザ映画であるものの、山中という一人の若者が利用され、無惨にも使い捨てられる姿を中心に描いている。山中は血気盛んであるが、親分の村岡や兄貴分の松永、広能への仁義を重んじる筋の通った男である。村岡はそんな山中の義理堅さにつけ入り、自分の敵を始末させ自身の名声の為に利用した挙げ句、山中がピンチの時にはさっさと見殺しにする。山中の姿は、国や家族を思って散っていった特攻隊の若者と重なる。
本作は大友勝利という暴力に狂った男が悪役として描かれているが、山中を利用して狡猾に勢力を広げた村岡も同じ穴の狢だろう。戦争という暴力に、正義も悪もない。その後には利用されて死ぬ者、敗者の死体が転がるだけ。
本作には前作同様に、国家に利用されて死んだ若者達への深作欣二の思いが込められている。