クシーくん

若い東京の屋根の下のクシーくんのレビュー・感想・評価

若い東京の屋根の下(1963年製作の映画)
3.6
見ていてくすぐったくなるような、今となっては余りにもテンプレな青春映画。「キューポラのある街」では意外にも恋愛関係に発展しなかった吉永小百合と浜田光夫が本作では甘酸っぱい恋の駆け引きを繰り広げる。素直になれない男女が同じ屋根の下に住む、エリコの壁よろしく「〆切」の張り紙、そして扉越しの告白。すれ違う二人の想いでクロスカット!とかベタ過ぎるけど良い。

蕗子(吉永小百合)の恋愛模様を縦軸に、既に結婚して家を出た兄弟達の複雑な結婚と家庭生活維持の難しさを横軸で描く。この横軸で夫婦生活や家庭問題の嫌な面が描かれていて多感な蕗子は色々思い悩む…みたいな展開はダレる部分も多く、散漫でまとまりがなかった。吉永小百合と兄弟の年がサザエさんとカツオワカメ以上に離れすぎていて、どんな家族構成やねんってなる。

山内賢良い奴過ぎるだろ…父親の就職を斡旋された立場から半ば自暴自棄気味になり、自分を押し殺していた小百合に対して、幼友達として勇気づける為に、「幸福って奴は自分の手で掴まなくちゃ」と戦後自由主義的幸福論をぶち上げるくだりはニューウェイブだなあと思う反面、山内賢自身は自分の気持ちを犠牲にして俯くが、小百合が振り返ると即座に笑顔に戻って見送る辺りが昭和節だなと思ったり。まだ若いのに表情の演技が上手い。アイドル歌謡映画と思って案外バカに出来ないな。

吉永小百合はこの頃顔がちょっと膨らんでて、余り美人感がない。特に終盤、アップになると少し厳しい。

歌に合わせたにしても最後のシークエンスがやたらと長いのは、出来上がったばかりの首都高でロケしたかったからなんだろうな。恋愛映画のエンディングとは思えない、希望溢れる爽やかな終わり方が時代性あって良い。

冒頭、曲がり角でぶつかって喧嘩した男女が思いがけない所でバッタリ再会…というくだりが登場している。この頃からあったのか。…いや、ひょっとしたら本作がオリジナルなのでは?
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