半兵衛

ラインの監視の半兵衛のレビュー・感想・評価

ラインの監視(1943年製作の映画)
3.0
当時敵対していたナチスを直接批判するのではなく、ナチスに協力してしまうアメリカ在住の人間を悪魔に魂を売った人間に重ね合わせて誇りなき心を悪として、諸事情によりヨーロッパから脱け出してきたレジスタンスの主人公をアメリカ映画らしい誇り高き心を持つ善の男として描くことでその様子を見ていた家族が主人公に共感していくのを通してアメリカ人に戦争に参加する意義を自然に込み上げさせる巧みなプロパガンダっぷりに感心。こういう巧みな手腕があるからこそハリウッド=アメリカは現在もなお光り輝いているのかも。

でも映画としては元の舞台を忠実に映像化したきらいがあり役者の演技もシーンの流れも舞台を鑑賞しているような感覚で映画的な活力が乏しいのが残念、プロパガンダも歴史的資料としての価値はあるけど面白いかと言われたら…。

悪女ではないし声もしゃがれていないベティ・ディヴィスが後年の作品の印象が強い私としては新鮮。

でも『影の軍隊』など反ナチスを唱えるレジスタンスの活動をリアルに描いた作品を見ていると、主人公のその後が悲惨なものに感じられてラストはちょっと悲しくなってしまった。
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