映画大好きザウルスくん

ディテクティヴの映画大好きザウルスくんのレビュー・感想・評価

ディテクティヴ(2006年製作の映画)
3.1
ヘロイン中毒の麻薬捜査官ヴァンダムは麻薬王との争いの中で身も心も破壊されていく…。『レクイエム』のようなノワール調のヴァンダム映画で、ここまでドン底な役のヴァンダムは初めて見ました。監督が『ザ・コマンダー』(以下、前作と呼称します)のサイモン・フェローズだったのでかなり期待値を下げて鑑賞したのですが、アクションにおける明確な戦略も功を奏したようで、前作とは比較にならないくらいよく出来た作品になっていました(訳分からないカメラワークは健在でしたが主人公がヘロイン中毒者という設定なので多少許すこととします…)。

アクションにおける明確な戦略というのは「ヴァンダムに格闘をさせない」というものです…(笑)。それのどこが戦略なんだと思われそうですがこの監督前作の時にマジで格闘シーンが下手で、せっかく身体の動くヴァンダムを撮っているのにその良さが全く活かされない映像に仕上がっていたんです。これなら格闘戦は無い方がマシだよ!と思っていたら本当に無くしてきました(笑)。でもその代わりに見せ場を銃撃戦に振れていたし、本作のボロボロなヴァンダムがいつものようなキレキレのキックしてても変なので、本作に関してはこの戦略が妥当だったのではないかと思います(ちなみに前作と比べると撃たれたらちゃんと血が出るようになっていたことも進歩した部分と言えます)。

見せ場を銃撃戦に振り、全体的にノワール調で、しかもヴァンダムが常時着用しているのが黒のレザージャケット(ロングコートとまではいきませんでした)で、ラストにはメキシカン・スタンドオフが取り入れられたりするので全体的にどことなくジョン・ウー印な香港ノワール風味を味わうことができます。それにしては爆発がなかったり2丁拳銃がなかったりスローがなかったりして欠陥部分も多いのですが、それでも方向性的には間違っていなかったはずです(もしかしたらこの製作陣、本作の数年前に公開された『レクイエム』を観てそっちの方向性に寄せることを思い付いたのかな…?笑)。

崩壊スレスレの妻との関係を描くドラマパートや汚い手段で娼婦と無料でセックスをするシーン、1人車の中でヘロインに手を染めるシーンなど終始疲れ切った表情を貫くヴァンダムの演技が本作の役柄によく合っていて、ヴァンダムを演技面で光らせるならやっぱ落ちぶれた役だよな〜と改めて感じました。ただ本作の1年後に『その男ヴァン・ダム』が公開されていることを踏まえると、この頃のヴァンダムは本当に自分のキャリアの低迷ぶりに苦しんでいたのかもしれません。

ヴァンダミングアクションは皆無ですがボロボロのヴァンダムが必死に闘う姿や更生しようと頑張る姿は見ものだし、キャッチコピーの「ヴァン・ダム死す?」は色んな意味でそこまで詐欺フレーズではないことなども踏まえて、一見の価値アリな作品です🙌