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きわめてよいふうけいのBaadのレビュー・感想・評価

きわめてよいふうけい(2004年製作の映画)
5.0
2005年、ロードショー時に見ました。

中平卓馬氏の写真は上映当時も今もさほど多くは見ておりません。私が氏の著作物に初めて触れたのは、学生時代に『なぜ植物図鑑か』を読んだ時。写真ではなくその文章から伝わってくる知性のありように、深い尊敬と羨望を覚えたのです。

この人のような頭脳を持ち合わせていたら、さぞかし世界がはっきりと見えるだろうに、と思い、いっぽうで、そのような知性と感受性をもちあせていることは、多分、かなりしんどいことに違いない、とも感じました。

本の内容は、残念ながら、今は詳しくは覚えておりません。その本を私が手にした時点で、氏はすでに記憶を失った状態だったということは、この映画を見て知りました。この映画の主な部分は氏の撮影時の日常生活をとらえていますが、写真との関わり方は、私が読んだ著書のそれとあまり違わないもののの様でした。

映画に映し出されていた過去のかなり無軌道な生き方も、撮影時の生き方にも、軽いショックを覚えました。氏のかつての生活圏も、作中のそれも、私自身の子ども時代から青春時代のそれと重なることが多く、かつての自分には窮屈で息苦しいとしか感じられなかった地方都市で、このように自由な生き方が可能であったということは、新鮮な驚きでもありました。

近年撮り続けていたという、スティル写真に映し出されてる生き物や植物の一つ一つのありさまが、たまらなくいとおしく思われました。

同じ時代に、この人が生き続けていた、ということが、なんだか誇らしく思えます。
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