みおこし

卒業の朝のみおこしのレビュー・感想・評価

卒業の朝(2002年製作の映画)
4.1
教師ものが大好きで、良作を探していたら巡り会えました。ありがちな展開ではなく、教師の葛藤を描いた一本。
観終わった後のガツンと殴られたような衝撃、そしてただただ胸に残るやるせなさとその中にほんのり残る希望。荘厳な人間ドラマとしても絶品でした。

聖ベネディクト高校の教員ハンダートは、西欧文明の歴史を教える敏腕教師。多くの生徒たちに慕われているが、ある日風変わりな少年ベルを指導したことから、教師としての壁に直面することになり...。

人を導くとは、これほどまでに難しいことか...と、改めて自分を導いてくださった恩師たちの顔が目に浮かぶ映画でした。
個人的にも学生時代、塾で教えた生徒たちの顔が思い出されて、色々考えさせられました。思った以上に教師が発した言葉は生徒の心に残っているし、はたまた全く響いていないこともあると。ハンダートは経験豊富な先生で、何事にも動じない知識と自信の持ち主だけど、ベルとの出会いでその信念が崩されてゆく。若き日のエミール・ハーシュがこの曲者キャラ、ベルを何とも憎たらしく演じていて圧巻です。
「愚か者は一生愚か者だ」と、彼を諭すハンダートのセリフ。これが終盤に近づくにつれて、じわじわ来ます。悲しいもので、その「過程」にどんな闇を孕んでいようとも、成功という「結果」だけにスポットライトが当たりがちな現実。ハンダートは、信念を持ってどんな過程=人生を歩んでいくかが大切かを生徒たちに説きますが、なかなかうまく伝わらない。だからこそ、「伝わった!」と感じた時のあのやりがいは何物にも代えがたく、はたまたそれが裏切られた時の喪失感といったら言わずもがな。コンテストのシーンから、教師としてのプライドをズタズタにされてゆくハンダートがかわいそうで見ていられなかったなぁ...。

美徳や正義の定義は人によって様々だけど、模範としてそれを少しでも正しい方向に導かなければいけないのが教師の役割。
教室で、先生方が日々どれだけの思いで生徒に向けて自分の言葉を紡いでいるかがよく分かる秀作。ケヴィン・クラインの落ち着きと愛に満ち、それでいて人間らしいリアルな面も持ち合わせたハンダート先生役も素晴らしかったです。ラストの教室シーン、まさかまさかの意外な人物に泣かされてしまいました...。
エミールをはじめ、ポール・ダノやジェシー・アイゼンバーグなど今をときめく若手スターの初々しい頃が見られるのも貴重!

誰もが共感できる重厚な人間ドラマ、必見です!めちゃめちゃオススメ!...邦題が感動教師ものに見えるからちょっと損してる気がしてもったいない!
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