ヤスマサ

ウォール街のヤスマサのレビュー・感想・評価

ウォール街(1987年製作の映画)
4.3
野心家の若き証券マンが、策謀渦巻く証券業界に飲まれていく姿を描いたサスペンス・ドラマ。
日々の生活にも事欠くことが多く、容易く大金を手にしたいと願う証券マンのバド・フォックス(チャーリー・シーン)は、業界のカリスマである大富豪ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)に取り入り、違法行為での成功に莫大な報酬を手にすると、やがてゲッコーの思惑へはまっていく。

ゲッコーは「強欲は善だ」という。
確かに資本主義経済は「欲」に依存しているが、「強欲」は果たして「善」なのか…。
労せずして得を得ることは、バドに限らず魅力的だが、「強欲」とは首尾よく利益を得ることに特化した様に見える。
ゲッコーは、「世の中で一番価値のあるものは情報だ」と説く。
「強欲」に魅せられたバドはインサイダーに手を染めるが、より新鮮な情報をゲッコーへ提供するために、更に深みへとハマる姿が見ていられないほど。
バドの父親カール(マーティン・シーン)は、そんなバドを地に足つけさせる存在だ。
本当の親子だけに、微笑ましく観てしまう。
カールはブルースター航空の技師であり、組合のけん引役でもある。
極端な見方をすれば、ゲッコーのリベラルで強欲な資本主義対、父親カールの保守的で社会主義的思考という構図だ。
資本主義経済によって富を得ることは「悪」ではないが、「強欲」に駆られれば「悪」となり、ゲッコーの姿そのものに見える。
ゲッコーがテルダー製紙社の買い付けに当たり株主総会で演説を打つ内容は、資本主義の本質であり、観ていて胸がすくシーンだ。
しかしゲッコーは利益を貪る経営者を糾弾しておきながら、株主には「強欲は善だ」と言い切る。
首尾よく利益を得るための口の巧さを感じるばかりだ。
映画では「欲」を否定しているわけではないが、欲に溺れた者の行く末を描き、教訓めいている。
それにしては「強欲」を「悪」とするには、ゲッコーの魅力が大き過ぎるかも知れない。
フランク・シナトラの♪ Fly Me to m the Moon で始まる映画は、「欲」に塗れた者を、また映画を観ている者をどこへ連れて行ってくれるのだろう…。

クライマックスで、セントラルパークの雨の中でのシーンは、雨が仇となって、撮影と編集の順番がテレコになってるのが気になってしまった。
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