津軽系こけし

モンスターの津軽系こけしのレビュー・感想・評価

モンスター(2003年製作の映画)
4.3
ただ、愛したかっただけなのに


【役者の底力】

シャーリーズセロンが、大幅な体重増加などの過酷な役作りに挑んだサイコ映画。実在した女性連続殺人鬼アイリーン・ウォーノスの激動の半生を映します。

殺人鬼の映画ということで、「ナイトクローラー」や「ノーカントリー」みたいなものを期待していたのですが、実際には全く異なる内容です。

アイリーン・ウォーノスの殺人録というよりも、むしろ彼女の恵まれない境遇と悲劇的なドラマにスポット当てた映画で「俺たちに明日はない」なんかに似てます。

アイリーンのロマンスを情緒的に映しながら、80年代当時の社会性に批判を示すなど、ロマンスと社会的テーマが融合しています。

【性欲は女性の人生を狂わす】

本当に「生まれ」って人の人生を簡単に決めてしまうのだと考えさせられます。

人殺しなんか到底許されることではないけど、男に狂わされ続けた彼女の境遇を考えると、どちらかが間違ってるとは言い難い。
娼婦を見下す社会構造も憎らしいし、表面だけで他人を決めつけることの残酷さを痛感させられる。近年、マイノリティの社会的地位は平等になりつつあるけど、私はその歪みがどこかで別の誰かへの攻撃に転じているとしか思えない。

アイリーンのような人がこれから先の時代生まれないことを切に願いたい。そんなことを考えさせられる作品でした。

【初U-NEXT的まとめ】

監督はパティジェンキンスということで知る人ぞ知る「ワンダーウーマン」の監督ですが、どちらにも「女性と社会」が鮮烈に描かれています。

とてもいい作品なのですが、やはり”希望”というところに焦点があてられているのが気に合いません。また、ロマンス仕立てなこともあって、どうにもこの作品には人を殺すことの映画的暗さがあんまり描かれていないのです。

殺人鬼映画を観るつもりでいると損をしますから、そういう期待をせずに視聴した方が良いかと思いますぜ
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