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日輪の遺産のkuuのレビュー・感想・評価

日輪の遺産(2010年製作の映画)
3.5
『日輪の遺産』
映倫区分 G.
製作年 2011年。上映時間 134分。

ベストセラー作家・浅田次郎の同名小説を、『半落ち』の佐々部清監督が堺雅人主演で映画化。

昭和20年8月10日、帝国陸軍の真柴少佐は、陸軍が奪取した900億円ものマッカーサーの財宝を陸軍工場へ移送し隠匿せよと密命を受ける。
その財宝は、敗戦を悟った軍上層部が祖国復興を託した軍資金だった。
真柴は小泉中尉や望月曹長、そして勤労動員として呼集された20人の少女たちとともに任務を遂行するが。。。

太平洋戦争の終戦前後を舞台にした今作品は、当時の日本人の生きざまが浮かび上がってくる物語。 もし、あの時代に生きていたら。。。
そんな考えをめぐらせずにはおれへんかな。
当然、実話ではないやろし、面白いプロットで話を作り上げてるんやけど、実話なら、なんとも、チョイとキレがない。
でも当時はこんな考え方が当然やったんかな。
ムーンサルト級のひねり技があればかなり嵌まってたかな。
映画自体は、あんな坂、こんな坂の山もなければ谷も感じないし、淡々と進む物語やったかな。
勿論、感動はしましたが。
原作は浅田次郎の同名小説。
ノンフィクションかと思わせるような巧妙な歴史ミステリーなんやけど。
映画やと現代を生きる男女2人が、 過去の出来事を伝える語り部となって物語が進む。
勤労奉仕に懸命に励み、軍歌を高らかに歌う純真無垢な少女たちが美しく、痛ましかった。
孫娘らに過去の出来事を語る久枝役の八千草薫は、彼女たちと同じ年ごろのときに終戦を迎えたという。
八千草が当時の記憶を胸に、役を超えて我々に語りかけてくるようにも思えたのは確かです。
終戦を迎えても、なぜ少女が壮絶な道を突き進んでいったんか。
見終えた直後は理解に苦しむかもしれない。
しかし、過酷な時代を生きた人々を支えた揺るぎない信念にまで思いが至った時、ふに落ちるものがあるはず。
彼女たちの鉢巻きに記された
『七生報国』とい 文字。
この世に幾度も生まれ変わり、国の恩に報いること。
実直さが悲劇の引き金になることは悲しいが、日本の未来を信じて疑わない真っすぐな眼差しが胸を打った。
年を重ねた久枝が級友たちと再会するシーンで、やっぱりフィクションだったと、ふと現実に引き 戻されてしまったかな。

余談ながら、
『七生報国』でふと思い出されるのは、
『死は文化だ。我々日本人はキリスト教文化とは違い、命に罪を求めない。それは命の美しさを知っているからだ。だから死にも美しさを求める』
なんてラディカルな言葉を放つ三島由紀夫。
赤軍派と性格真逆な一卵性双生児三島由紀夫。
どちらが善い、どちらが悪いてのは答えがないが国を思い、憂いてたのは確かかな。
彼が自決時に巻いてた鉢巻に書かれた『七生報国』の文字と演説最後の天皇陛下万歳。
また、その関連から、60年に社会党党首浅沼稲次郎を講演中に壇上で刺殺し、獄中自殺した山口二矢が壁に書き残した文句でもあったかな。
今じゃそんな信条や理念で死も厭わない人は、いるんかなぁなんて、感想書いてるときにふと思ったので。
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