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バベルのka10のレビュー・感想・評価

バベル(2006年製作の映画)
3.9
公開当時のキャッチコピーは「届け、心。」だったが、この映画のテーマはむしろ「心は届かない」ことなのではないか?
神の世界に迫る高さの塔=バベルを神は砕き、塔を再建する事が困難になるように言葉を分けた
この映画の登場人物達も言葉が通じない、いや言葉が通じたとしても思っている事はバラバラで心は通じていないのだ
心は通じていないのに遠く離れた人達が一つの事件を切っ掛けに事象で通じ合う
しかしだからと言って見えない誰かのことを思い合う余裕は無い
皆、自分のことだけで精一杯
そして自分のことしか考えていないから過ちを犯す・・・
過ちを犯すのは「悪い人」だからではない、「愚かだから」なのだ
そうして犯した過ちにより最悪の罰を受けるのは、必ずしもその当事者とは限らない
自分の犯した過ちにより、身近な人達を傷付けていく
そんな悲しい世界に自分達は生きているし生きていくしかない
そんな絶望感と悲しみにより最初から最後まで強い緊迫感に彩られている
軽い気持ちで観るには重すぎる映画だと言わざるを得ないが、自分はけっこう好きです
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