チッコーネ

ブラック・タイツのチッコーネのレビュー・感想・評価

ブラック・タイツ(1960年製作の映画)
2.7
4部構成になったフランス産のミュージカルで、監督は英国人のテレンス・ヤング。
音はジャズでなくクラシック調、ダンスもモダンバレエ。
スタジオに作られたセット上での演目を観せているが、映画なので当然、カメラの切り替えやクローズショットもあり…、エキストラに至るまで、出演者の身体能力は確かなもの、しかし舞台基調なので映画として全体を観ると、やや退屈。

個人的に最も印象に残ったのは2パート目の『シラノ・ド・ベジュラック』で、夜の逢瀬場面でモイラ・シアラー(『赤い靴』)が着用しているドレスの胴体に縫い付けられた、長短さまざまなチュールかシフォンが、ダンスに合わせ揺らめくさまは幻想的に美しい…、まるでスローモーションを観ているような錯覚に陥った。
なんて匠な計算と思ったら、このパートはサンローランが衣装担当で、さすがと唸る。
3パート目は身体に1本、棒が通っているように美事なシド・チャリシーがヒロイン。
全パート中最も煽情的な振り付けで大股開が頻出、ストーリーはほぼ皆無…、居室美術も非常にキッチュだった(ディスコ時代以前の映画だが、天井にミラーボールが!)。
1と4パート目のヒロインは、お家のジジ・ジャンメールが担当。
無二の存在なものの色気は乏しい彼女に、4パート目の勝気なカルメンはピッタリ。
酒場での登場場面で彼女の顔面に当てられた白い照明が、頭髪に擦り付けられた金箔をキラキラ輝かせるさまは、ゴージャス。