午後

袋小路の午後のレビュー・感想・評価

袋小路(1965年製作の映画)
3.0
ウォルター・スコットが執筆をしていたという海に囲まれた11世紀の古城に住む新婚夫婦のもとに、負傷したギャングと思われる二人組が転がり込んでくる。外部からの無法な闖入者が日常を破壊していくという大枠は不条理劇によくあるもので、冒頭は満潮に取り囲まれる車のショットや、鶏小屋に身を隠すライオネル・スタンダーの脂ぎった顔面等、画の力で飽きずに観ることができた。中盤の来客のシーンから俄然面白くなる。大切なものをピンポイントで台無しにしていくガキの憎たらしさが物凄い。粗野でがさつな暴漢の方が、旧知のブルジョワ夫婦よりもウォルター・スコットの話に理解を示してくれるシーンに涙が出そうになる。横暴な大男に対して、順応的な態度を示し続ける典型的な寝取られ男である夫が、海鳥に囲まれて本心を吐露するラストシーンの疼くまるシルエットが印象的。噛み合わないやり取りの外の、大量の鶏や海鳥、梟など、鳥の声ばかりが心に残る不思議な一作。
どうでもいいけど、ライオネル・スタンダーが剥き出しの暴力そのものではなく、自身の暴力の行使可能性のみによってその場をスムーズに支配する様が、この手の映画では珍しい演出だがリアリティがあると思った(見せしめに一発ぶっ放したりしない)。
物語というよりは状況があり、その噛み合わなさや滑稽さ、誰もそこから身を引くことができない実存の居心地の悪さやもどかしさと不条理を描きたかったんだと思うけど、コメディにしかならないような場面で笑いを生じさせないことによってそれを表現している。
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