めしいらず

袋小路のめしいらずのレビュー・感想・評価

袋小路(1965年製作の映画)
4.2
才気煥発なポランスキー最初期の三大名作の一角。弛緩したサスペンスと知的でブラックなコメディ風味が堪らない。一筋縄では行かない三人の変化する関係性が眼目。禿頭の異様な風体の主人公役プレザンスが段々ウディ・アレンにも似て見えてくる。画面の奥行きに意識的な画作りが絵画的に美しくアート映画に似つかわしい。満潮の度に隔絶される島の古城に住まう夫婦と、突然闖入してくる手負いの逃亡犯の奇妙な三角関係。インテリで気弱で体裁屋の夫と、退屈まぎれに来客に色目を使う嘘つきの若妻との冷え込んだ夫婦関係。脅す言葉こそ粗暴だけれど二人を頼り仲間と呼びどこか親しげでもある逃亡犯の一風変わった風情。怖くない逃亡犯に勝手に怯え言われるまま唯々諾々従う夫に妻は苛々を募らせ、その反動でか逃亡犯に接近し気まぐれに協力し自家製のキツい蒸留酒で労う。しかし来客の機に乗じて彼女は城の主人のように振る舞い始め、逃亡犯を召使として顎で使い不自由を強いられた溜飲を下げる。そして今度は来客の中の男に色目を使うのだ。劣等感を刺激された夫は来客にあたり散らし追い返してしまうけれど、妻と逃亡犯には同じようには強く出られず、相も変わらず二人の間で気を回しては右往左往するばかり。しかし妻が逃亡犯の隙を突いて拳銃を奪うと三人の関係に俄かに緊張感が走る。夫は妻にせっつかれその気もないのに銃口を逃亡犯に向けると、意に介さず詰め寄ってくる彼に思わず発砲してしまう。妻はその場から逃げ去り、一人とり残された夫は前妻の名を呼びながら泣きじゃくる。困り事の原因を外に求め確固とした意志を持たないまま生きてきた逃げ腰男の末路は袋小路だった。
再鑑賞。
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