紫のみなと

袋小路の紫のみなとのレビュー・感想・評価

袋小路(1965年製作の映画)
3.9
ロマン・ポランスキー監督って、ほんとに変な映画を作る天才だなあ…と、エンドロールを眺めながらつくづく。でも、凄く面白かったです。

フランソワーズ・ドルレアック目当てで見たのですが、彼女とドヌーブは紛れもなく血が繋がってるんだなと感じ入るほど、遺伝子的に酷似している。
ドヌーブは幼児体型ですがドルレアックはすごくスタイルがよくて伸びっぱなしのブロンドをバッサバサとなびかせて、裸で、ジーンズで、ブラックドレスで裸足で歩き回る。物凄くかっこいい!
のっけから若い男と浮気していて夫を小馬鹿にした感じ、夫婦で住む古城にある日闖入してきた中年で醜悪な悪党にむしろ媚びるような態度、反対に悪党の足指に紙を挟ませ火をつけるシーンは爆笑もの、、、綺麗な脚で夫を小突き回したり、子供にキレたり、なんといっても紫煙を燻らせふり返るその姿…この役をドルレアックが演じたことが、本作が成功した作品だとすれば、その大きな要因です。

特筆すべきはドルレアックのみならず映画の舞台。満潮になると外界から遮断される古城、終始吹き付ける風、散らばる鶏、タマゴ、ワイン、自家製ウオッカ、海、太陽、夜中に炎上する車…この映画、カラーでも観てみたかった。

ドルレアックの笑い声も夫の友人夫婦との茶番劇も子供の度を越したイタズラも繰り返し流れるレコードも、なにもかも癇に障る演出。
「反撥」は、ドヌーブ演じる少女の精神が壊れていく切なさがあったけど、本作はそんなものは皆無なのです。