荒野の狼

袋小路の荒野の狼のレビュー・感想・評価

袋小路(1965年製作の映画)
5.0
もちろん粗筋(あらすじ)の面白さを見せる映画ではない。ポランスキーの映画には、いわゆるポランスキースタイルといったものが無い。それぞれ、どこに照準を合わせているのかを味わうわけのものだから、その照準は様々であって、必ずしも命中するとは限らないが、この名作は彼の狙いの標的のど真ん中をぶち抜いている一本だろう。
見るべきところは数々あるが、それは他のレビュアーに譲って、一つだけ述べるなら「次に来る展開の妙」だろう。別に意表をつくとか大袈裟な事が起きるわけではないが、メインの俳優ともども全ての人物が、次に何を言い出すか、何をしでかすか、それだけで全編を引っ張ってゆく。事の発端や結末は重要じゃない。観客はただただこの流れの連続技(わざ)を味わえばいいのである。そこに合点(がてん)が行くかどうかで、評価は分かれるだろう。予想外の展開とか、どんでん返しだとか、ネタなんてものを期待する向きには物足りないかもしれない。狙いはそこではないのだ。予測の当たり外れなんてものは、どちらにしたって思考の袋小路である。失望したならそれを踏まえて再度鑑賞すればいい、袋小路は入口が出口である。
荒野の狼

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