えいがのおと

(500)日のサマーのえいがのおとのレビュー・感想・評価

(500)日のサマー(2009年製作の映画)
3.9
恋愛は人生の逃げ道ではない。
人生を思考停止して夏休みを始めても、いつか終わりは来てしまう。


恋をした状態を、「春が来た」と言うのは日本だけなのだろうか。
寒い冬を通り越し暖かな風が吹く状態、満開の桜が象徴する晴れ晴れとしたイメージが、 恋愛が始まるトキメキと類似すると考えるのは、万国共通なのかもしれない。

「やっと春が来たね」と長年恋をしなかった人の初恋に使うことが多いことを考えると、サマーを題する本作の恋愛は二度目の恋と言えるだろうか。
燃えるような暑さや、去っていく切なさを恋愛に重ねているとも感じられる。

初恋を終えた男たちは、恋愛に対する失望と、そしてそれを拗らせたからこその、こうであるべきという考えが固まっている。
そんな時に、ピッタリな出会いがあった時、男たちは夏のように熱く盲信して恋をするのである。
それが本当の正解かどうか確かめもせず。

しかし、500日も続く夏が終われば秋が来る。
ただ、秋が正解かは誰にも分からない。
冬が来て、そして再び春、夏がやってくる。
降りなければいつまでも回り続ける山手線のように、人生はどこかに降り立つしかないのである。

モラトリアムとして夏休みを選択するのは間違いかもしれないが、夏が不正解なわけでもないだろう。
どこが自分の季節なのかを自問自答して人々は、四季を生きていくのである。