ハシゴダカ

曖昧な未来、黒沢清のハシゴダカのレビュー・感想・評価

曖昧な未来、黒沢清(2002年製作の映画)
3.8
黒沢清監督作『アカルイミライ』(2003年)制作におけるドキュメンタリー。
当たり前だけど、20年前なので黒沢監督がさすがに若い。というか、オダギリジョーも浅野忠信も若い。藤竜也はあんまり変わらない(笑)。

監督が演出している場面がたくさんあるのが、ファンとしては嬉しかった。
その演出の仕方が意外とキビキビしておらず、ざっくりしているというかファジーというか、決してカッコよくはないので逆に好感を持ってしまった。

後半で「心と心が葛藤しあう人間の心理を描いたドラマが嫌だ。顔を含めた肉体を通じてそこに葛藤が見えてくればOK」と監督が言っていて、この監督のドライな作風の裏付けみたいで妙に腑に落ちた。

とは言いながら、撮っているうちにその俳優達の演技による「心理」に抗えず、ラストシーンでのオダギリジョーの演技につい目を潤ませてしまうのが、とても新鮮だった。

「予算とスケジュールを必ず守ります」と宣言する黒沢監督について、普通は「面白い作品を撮ります」とかではないの?とプロデューサーを困惑させる黒沢監督。

撮影期間が監督が希望した5週間ではなく3週間と聞いて、ぶっ飛ばして撮ったら、早すぎて余っちゃった(笑)っていう。

映画とは、ある記録された現実の連なりを大勢の人と一緒に観る場、と言い切った黒沢監督。
20年後の今、どんな風に考えているのかすごく気になる。
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