一人旅

気ままな情事の一人旅のレビュー・感想・評価

気ままな情事(1964年製作の映画)
5.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
アントニオ・ピエトランジェリ監督作。

妻の浮気を疑う夫の奔走を描いたコメディ。

自由奔放な若妻とそれに振り回される夫を描いた『三月生れ』(1958)のアントニオ・ピエトランジェリ監督による艶笑喜劇の秀作。靴工場を経営する社長アンドレアが暇つぶしに知人の人妻と気ままな浮気を重ねるが、簡単に他所の男に抱かれる人妻の姿を見たアンドレアは、愛する自身の妻マリアグラツィアも実は隠れて浮気をしているのではないかと疑い始めて…という“妻の浮気を疑う夫の奔走”を、軽快なテンポと音楽で活写しています。

自分が人妻と浮気してしまったくせに、その事実を棚に上げて愛する妻の浮気をひたすら疑うアンドレアの自分勝手な振る舞いと情けない男の性がユーモラスに描写されます。妻と浮気する恐れのありそうな若くて逞しい門番をクビにしてヨボヨボのおじいちゃん門番に変えたり、妻の電話を別室から盗み聞きしたり、知り合いのイケメンに妻を口説かせようとしたり、会社の古株社員に頼んで日中の妻の行動を監視したり、旅行に行くと見せかけて家の外から双眼鏡で妻の様子を観察したり…。妻に対するアンドレアの疑いは日に日に増幅していき、やがて神経症のような崩壊寸前の精神状態にまで“勝手に”追い込まれていくのです。妻の浮気の確証を得るために行動をエスカレートさせていくアンドレアの奮闘ぶりが滑稽でしかもそもそもの発端が“自分の浮気”という点が笑いを誘いますし、アンドレアが度々見る妄想劇場(妻が他所の男相手に浮気する脳内妄想)は幻想的な可笑しみに溢れています。

疑う夫役にウーゴ・トニャッツィ、疑われる妻役にクラウディア・カルディナーレ。本作のカルディナーレは夫に浮気を疑われ続ける不憫な妻を好演していますが、夫の妄想内では妖艶な浮気妻に変貌するその対比が強烈です。「女が一枚上手」な部分も最後にしっかり見せてくれます。
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