YasujiOshiba

気ままな情事のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

気ままな情事(1964年製作の映画)
-
YT. 23-112。クラウディアの魅力全開。イタリア語のタイトル「il magnifico cornuto 」は直訳すれば「すばらしい寝取られ男」。イタリア語では女房に浮気された男のことを「cornuto」(角が生えた男)という。もしも事実を知ったら「角が生えた」ように怒り狂うということなのだろう。ジェルミの『イタリア式離婚狂想曲』(1961)にはこの言葉と角の生えた絵も出てきたはず。

その「すばらしい寝取られ男 il magnifico cornuto 」を演じるのがウーゴ・トニャッツィ。こういうキャラクターを演じさせると最高にうまい。笑わせてくれる。グロテスク寸前まで持ってゆけるところが達者。その後はすっかり騙されて、みごとな「寝取られ男ぶり」(Cornuto!)とくる。ほんと「すばらしい!」(Magnifico!)。

それでも映画の中心はクラウディア・カルディナーレ。だいたいマリア・グラッツィアなんて古風な名前をつけられたところが、意図的なんだよね。流行のエロティック・コメディは、お堅い女性をよろめかせちゃうわけ。おもしろいのは、主人公の帽子屋の御曹司アンドレアが、ミシェル・ジラルドン(!)の演じる美しい夫人クリスティーナに言い寄られてよろめいたのが始まり。アンドレアはこのクリスティーナ夫人がものの見事に夫を騙しているものだから、それまで信じ切っていた自分の妻の貞節を疑い始めるわけ。おばかだけど、わかりやすい。

その疑いのなか、アンドレア/トニャッツィがまたあれやこれや、それはそれはいろいろな想像をしちゃう。妻が誰とどんな浮気をしているのか。疑心暗鬼なのだけど、暗闇にのなかに登場する貞淑な妻の淫らな浮気現場のイマジネーションがこのエロティック・コメディの眼福。クラウディア・カルディナーレの見事なコスプレの数々。きわめつけは新宅の披露パーティで客人たちを寝室に案内したときのアンドレアの脳内妄想ストリップショー。

ところがどんあ濃艶なシーンでも、じつに清らかであっさりしているのがカルディナーレの強み。しかもエロじゃなくてカワイイ。そこがよい。最後のどんでん返しなんて、カルディナーレとトニャッツィだから笑えちゃうのだ。

日本語のDVDやBDも発売中。これは高画質のほうがカルディナーレの魅力を味わえる。

音楽もよい。アルマンド・トロヴァヨーリの軽やかな劇伴と、ジミー・フォンターナのロックンロール。オープニングのギターなんて最高。
https://www.youtube.com/watch?v=itvZw8acyYk

ただ、この妙な物語には実は三面記事が隠れているらしい。1962年に妻の愛人から贈られた食前酒(Bitter)で毒殺された男の事件。でも映画はあくまでも喜劇で誰も死なない。それやそうだ。悲劇よりも喜劇がよいに決まっている。

https://m.dagospia.com/quando-dicono-tranquillo-ha-fatto-una-brutta-fine-1962-una-folle-storia-di-corna-153355
YasujiOshiba

YasujiOshiba