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柳生一族の陰謀の東京キネマのレビュー・感想・評価

柳生一族の陰謀(1978年製作の映画)
2.5
松方さん追悼17本目。本作品、1978年の映画興行収入で7位、30億円以上の興収です。ロードショー1,300円の時代ですからね、大ヒットです。

深作欣二はもうちょっと現代風にしたかったらしく、あの錦之助にちょっと芝居を代えてくれないかと注文したらしいですが、「私は、これ以外の芝居は出来ません」ときっぱり。仕方なく、錦之助の芝居中心に構成したらしいとの話ですが、けだし当然。錦之助の外連味がなければ見れるもんにはならなかったと思います。

勝手に推測すれば、この映画のヒットの理由は深作欣二自身も良く分かっていなかったのではないかと思いますよ。簡単に言えば、新しい歌舞伎だと思ってお客さんは観に来たんです。新歌舞伎なんです。アクション劇とか現代劇の反作用なんですよ。全体的にみても普通なら(とは言っても、何を普通とするかは微妙ですが・・・)、オーバーアクションになり過ぎて錦之助だけが浮いてしまうだろうと想像してしまいそうですが、全くそう見えません。むしろ錦之助がニュートラルで、原田芳雄や大原麗子が薄く見えてしまうくらいですから。そのくらい、錦之助の芝居力が凄いということなんですね。映画全体のトーンを錦之助一人で規定してしまっています。

映画としてどうかと言えば、奇想天外、史実無視の革命映画ってとこでしょうか。マルクス史観バリバリの赤映画です(笑)。ヤクザや三国人が好きな東映らしい(もとい、正確に言えば、ヤクザな三国人ですが)といっちゃそれまでなんですけど、あの公家の描き方を見ても分かるとおり、本当に日本が嫌いなんですねえ、東映は・・・。
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