Brian

ひなぎくのBrianのレビュー・感想・評価

ひなぎく(1966年製作の映画)
4.0
<時代背景説明・そこから読み取れる強烈な表現力>

当時やそれ以前の時代背景を知り、民衆や国内の情勢に思いを馳せてる事は、作品として捉えるにあたって必要不可欠だと私は思う。

では、作品が発表された1966年辺りに何があったのであろうか。

1946年~1960年の間にソ連の影響下にあった共産党が、国に社会主義体制を布いた。しかし、スターリン的抑圧に対する民集の不満が爆発し、それによって「プラハの春」と呼ばれる、自由化・民主化路線が進められるようになった。この時、改革の行方に懸念を抱いたソ連を含むワルシャワ条約機構の五カ国の軍が介入し、「正常化体制」が推し進められた。国内の秘密警察網が整備強化され、国民同士の監視及び警察への密告が奨励されていた。その結果、当時の東ドイツと並び東欧で最悪の警察国家になってしまい、人々は相互不信に陥ってしまう。又教会内での密告のし合いから宗教不信による無心論者になっていくものは少なくなかった。

大まかにこの映画の特徴を捉えるなら、「当時の民集の不満を生々しい程にアンチテーゼとして体現している」ところだと思う。

時代背景を踏まえると、全ての描写に思い当たる節が出てくるはずである。男が好きだと言い寄り、それに対し身勝手だと、言うセリフがあったと記憶しているが、国家の上っ面さを皮肉っているものではないのか。

自由奔放⇄圧政・思想統制
食欲が異常(消費)⇄物資が足りない
人が主人公らを認識しない=当時の画一的な社会主義下での代替可能という自己認識
豪華な食事会場=政治掌握者と民集との極端な対比
主人公らの単一的な反省=思想統制
掃除=民集への皺寄せ
新聞=情報統制
...etc

以上から、生々しく強烈に当時の空気や不満や怒りに代表される感情が表現から直接的に伝わると思う。そこがこの作品の芸術的価値だと思う。事実、発表したものの発禁処分を受けてしまった。

映像作品として見れば、風変わりなトリップ映画にしか見えないだろうが、上記のような見方もあるという事を書き記しておく。

私もまた見直す必要が有りそうだ。
Brian

Brian

Brianさんの鑑賞した映画