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炎の城のodyssのレビュー・感想・評価

炎の城(1960年製作の映画)
2.0
【ハムレット】

BS録画にて。
1960年の時代劇。

冒頭、今から400年前の話という説明が出ます。
1560年というと、有名な桶狭間の合戦があった年。要するに戦国時代ということになる。

まったく予備知識なしで見たのですが、すぐ「これ、ハムレットじゃん」と気づきました。
城主の息子である若様(大川橋蔵)が明国に長旅をして、故国に帰ってくると城主である父はすでに亡く、父の弟、つまり叔父(大河内伝次郎)が城主になっており、しかも母(高峰三枝子)は叔父の妻に。
事の真相を探ろうと、若様は気が狂ったふりをします。
それを悲しむのが若様の恋人で、原作ならオフィーリアですが、この映画では三田佳子が演じています。
他に、オフィーリアの兄レアティーズ役、兄妹の父役も、ほぼ原作通りに登場。

主要人物といい筋書といい原作にかなり忠実ですけれど、日本の戦国時代に移し替えるとかなり無理というか、不自然な感じが否めません。もう少し、翻案としては思い切って原作の細部を変えても良かったのではないか。

逆に最後のシーンでは、原作なら一気呵成に事の真相が明らかになり、主要な人物たちが次々と死んでいって大団円になるのですが、この映画では間延びしていて、迫力もすごみも減殺されています。もっとも、ウィキによるとこれは東映からの横槍のためだとか。日本の映画会社ってダメですね。

そこのところは監督のせいでないとしても、シェイクスピアの翻案映画となると、やはり黒澤明くらいの力量がないとうまくいかないのかも知れません。

主役の大川橋蔵は、私は彼の映画をそれほど見ているわけではないのですが、育ちのいい若様侍を演じることが多いようなイメージがありますけれど、ここでは若様ながらどこか野性的な魅力があって、なかなかいいと思いました。
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