ロケ撮影でも自然光をカットし、人工照明で作り込まれている。そのリアルだが違和感のある明暗の演出は、市川崑監督作品らしい独特の雰囲気がある。
葉の上を滴る一滴のしずくが静止し回想に入るという、その一瞬に主人公が過去を振り返り見た、走馬灯のようなものを見させられるわけだが、話としては、もう少し女の謎を掘り下げて欲しかった。
時代劇でも、刀はずっと鞘に収められたままだったのは、話の重きをどこに置いているか、何に焦点を当てたいかが伝わってくる。そもそも、武士といっても、そんなにホイホイ刀を抜いていたわけではないから、この方が現実味があって良かった。
見たことのあるロケ地だなと思ったら、自分が自主制作で関わった時代劇映画でもお世話になった、京都の下鴨神社でロケが行われていた。
単に木に囲まれた場所というシーンでも、森は森によって違う表情を持っているので、そのシーンの意図するものによって、慎重にロケ地選びをしなければならないと改めて思った。