ユミコ

松川事件のユミコのレビュー・感想・評価

松川事件(1961年製作の映画)
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1949年(昭和24年)の夏に発生した、いわゆる「国鉄三大ミステリー事件(下山事件、三鷹事件、松川事件)」の1つである「松川事件」の映画化。
発生地は、福島県福島市松川町。青森発上野行きの列車が脱線転覆し、乗務員3名が死亡。その線路には何者かが故意に仕掛けたらしき見るからに怪しい形跡があった。そこで国鉄労働組合員10名と、東芝(現・北芝)労働組合員10名が逮捕される。後にわかった事… 全て警察のでっちあげによる逮捕なのだった。何故そうなったのか… 真犯人は何者なのか… 現在に至っても未解決ゆえ判明されておらず、当時、共産党を支持していた東芝労組らの労働運動を弾圧する為、GHQや警察らが仕組んだものでは… と言われているが、真相は判っていない。その中で最初に逮捕された赤間(小沢弘治さま)と警察との取り調べの模様は、生々しく理不尽の極みだった。「認めなければ−30℃の網走にぶち込んで一生出られなくする」だったり、白状するまで寝かせない。だったり、真夏の猛暑の中、赤間の目の前で冷たいラムネをおいしそうに見せつけながら飲む。だったり、ありもしない強姦罪の容疑をかけ、そうされたくなければ白状しろ。などといったもの…。戦後最大級のでっちあげ事件でもあったという。

初、山本薩夫監督作の鑑賞。製作は事件の第二審公判の途中の時点(1961年・昭和36年)だった為、映画はそこまでで終わっている。前半は好きだった。古い町並み、地元の行事、当時の生活風景や営みが存分に描かれていて。しかし中盤に差し掛かる頃には裁判のシーンが殆ど。舞台劇のように順番に皆がセリフを一言ずつ語りながらストーリーというか、裁判が進む。ただただセリフ有りき。…ビジュアル的にちょっと退屈だったし、味気なかった。弁護士役のお2人(宇野重吉さま、宇津井健さま)も、折角の素晴らしい方々だというのにパッとせず終いだったし。強いて言うなら赤間役の小沢さまが非常〜に真に迫った演技を観せてくれ、ある意味、彼の独り舞台だったとも言える。
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