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ドレスデン、運命の日のバナバナのレビュー・感想・評価

ドレスデン、運命の日(2006年製作の映画)
3.1
ドレスデンという街の説明をすると、800年前から歴史上に現れ、
ザクセン王朝が誕生してからは、その首府となった都市。
美術を愛した王侯たちの熱意で、300年に渡って造営されてきた美しい建造物があり、
多くの絵画やマイセンの陶磁器を集めた数々の城や、日本の陶磁器のコレクションを集めた“日本宮殿”まであったという、
いわば日本でいえば京都、イタリアでいえばフィレンチェのような街です。

その街を、もう戦争の大局も決している1945年2月に爆撃され、街の85%が破壊されました。
しかも、戦後はソビエト側の東ドイツ内の一都市となった為、本格的に当時の建物の再建を始められたのは、ベルリンの壁崩壊後からです。

本作はおそらくドレスデンの聖母教会修復完成を祝うためのドイツのテレビドラマなので、正直言って、ストーリー自体はどこかで観た様な感じのものです。
あんなに最初、婚約者とイチャイチャしていたヒロインが、どうして裏切ってしまったのか全く分からないとしても、
相手のイギリス人パイロットも、どうして自ら目立つことするの?、と驚愕の行動をしたとしても、そんな事どうでもいいんです。
だって本当に見せたいのは、ドレスデンの大空襲の様子だけなんですもの!

戦後はユダヤ人に犯した罪もあって「ドレスデンにひどい事しやがって!」と声高に叫べなかったけど、
もう戦後60年経った事だし、ドレスデンの大空襲がどんなだったかを、戦死者への鎮魂も込めて語らせてくれよ!
というのが、本作なのです。

その為、大空襲時に熱風が襲ってくる様子や、逃げた人々の地下壕での様子、大空襲直後の街の様子(熱風で炭化した多くの遺体など)が、これでもかと描かれています。

私は映画チャンネルでこの作品を見たのですが、DVDには、ドレスデンの街を復旧する様子が映像特典に付いているそうです。
本作のラストにも、再建された聖母教会を祝う実写の映像が、そのまま使われています。
この聖母教会は、瓦礫の中からまだ使える石をそのまま使用したので、ほとんど新しい石が使われている真っ白な壁の中に、点々と当時の燃え残った黒い石が嵌め込まれているのが分かります。

ドレスデン…、いやドイツ人達は、ドレスデンの街を当時のままに復興させる為の金銭と労力を、惜しみなく提供したそうです。
いわばこの作品は、“ドレスデン復興の祭典”の一部なのです。
「やっとオラが街が、元の美しい姿に戻ったぞ!」という、
「ドレスデン祭り」なんです。
どうかドラマの部分が支離滅裂でも、許してやってください。
ドイツ好きの人が見たら、感慨深い作品だと思います。
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