harunoma

任侠ヘルパーのharunomaのレビュー・感想・評価

任侠ヘルパー(2012年製作の映画)
4.2
負の連鎖、居た堪れなさ、ヤクザも含め無能なものたちの共同体。
馬鹿野郎、この野郎の掛け声とメンチだけが、草彅の仁義を駆動している。

応答不可能に思われるものに草彅は、労働を与える、労働を一緒にやる、それが最低限の共同体であるかのように。リアリティのコントはルノワールの祭りを垣間見せ、草彅のやるせない薄く青い凡庸な作業ジャンパーとパーマ気味の髪に集約される。寄るべきものたちが嘘のようにここ熱海に集まっている。
刺青の痕跡と身代わりの一者、その記憶と微笑み、手を振ること、触ること。大雨の軋轢から灰燼の戦時下。すべてのものが傷だらけである。
「呼び求め促して生起して」しまった共同体の場は、あくまでも当事者の場として生起する、であるがゆえに草彅は闘う。人の感触、実感。
倍賞美津子にはならない(『ニワトリはハダシだ』への回答が待たれる)安田成美の慟哭も、堺正章のクズさも、風間俊介、宇崎竜童も素晴らしく、キャスティングの妙は最高だと思う。最初から絶対悪ではない香川照之も。夏帆ですら素晴らしい役どころ。

草彅は唯一ジャニーズフィルターをぬけだしている。
山本英夫の撮影も職人である。
最後の大抗争劇もおもしろく、草彅の大ジャンプに茫然自失でもはや戦意喪失した杉本哲太の様子も素晴らしい。
香川と草彅、地を這う二人。黒沢映画の続きを見たいものだ。
そしてまたトンネルへ、今度は背を向けて。
harunoma

harunoma