フライ

任侠ヘルパーのフライのレビュー・感想・評価

任侠ヘルパー(2012年製作の映画)
3.7
ドラマは全く見ていなかったが、ここまでシリアスでリアルな内容とは思っておらず、自分の亡くなった祖母や独特の匂いが漂う老人介護施設を思い出し、観ていて辛くなった。

これまで見た事の無い草彅剛の想像以上に堂に入った極道演技と、老人介護のリアルな負の部分を赤裸々に晒す内容が妙にマッチしていて心に響くものが。

ヤクザから脚を洗いながらも任侠道を重んじる草彅剛が演じる翼 彦一が、コンビニで仕事をしていると、年老いた元ヤクザの強盗 蔦井と出会った事で巻き添えを食う事に。偶然同じ刑務所にいた蔦井の紹介で組事務所に入るのだが、シノギをする事になる老人介護施設は、汚物と異臭の漂う生活保護費や年金を巻き上げる為の老人の牢獄なのだが。

この手の映画でよく見るヤクザの暴力的な部分とは裏腹な薄っぺらい優しさの無い彦一のぶっきらぼうで冷たい雰囲気が、役柄として逆に好感が持てた。何より世間で害悪とされる暴力団と、それ以上にいらない風見鶏政治家、家族から見放された認知症の老人を組み合わせた内容は、世の中が蓋をしている部分への皮肉と社会風刺を感じ考えさせられるものがあった。
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