デニロ

五番町夕霧楼のデニロのレビュー・感想・評価

五番町夕霧楼(1963年製作の映画)
3.5
1963年製作公開。原作水上勉。脚色鈴木尚之 、田坂具隆。監督田坂具隆。2006年に『誠実一路 「田坂具隆の世界」 with島耕二』という三百人劇場での特集で一度観ている。その時は佐久間良子のカラダを得て興奮した千秋実の、処女じゃなかったけれど得体の知れぬ珍しいカラダをしている、肩から下にそばかすのようなものがあってそれが興奮してくるにつれ赤く染まる云々と言い募る姿に、こちらも興奮してしまった。

で、17年ぶりに再見したわけですが、クレジットで笑わせてくれます。木暮実千代、丹阿弥谷津子、岩崎加根子と出演者が紹介され最後の最後に、/・・・・・そして、佐久間良子。/と出るのです。ストーリーは件のシーンしか覚えていなくて、全く以て新鮮でした。とはいっても記憶に全くなかった金閣寺を燃やす修行僧のエピソードがなんとも不可思議で、その修行僧役河原崎長一郎からは孤独や絶望も拾い出すことが出来なかったので、何故に彼がその仕儀に至ったのかさっぱり分からない。貧農故に廓での生活を余儀なくされる娘の短い一生を描くことが主であるので、見習い坊主のこころの奥底を掻き出す必要がないのかもしれない。

京都北部にある与謝半島。母親の病気と幼い妹がふたり。葬儀で当地に居合わせた京都五番町にある夕霧楼の女将木暮実千代の下に父親に連れらてやって来る佐久間良子。年は十九。こんな田舎で思わぬ拾い物をした木暮実千代は喜ぶのですが、このお話、金閣寺が燃える頃のお話で、その時代にもまだ口減らしのために娼婦になる女性がいたんだと驚くばかり。

そんな彼女はしおらしくうつむき加減で日々を過ごしているのですが、さて、水揚げの時がやってきます。小暮実千代の絶対に未通女よ、という売り込みに鼻を長くして面接した西陣の織物の旦那千秋実。すぐやりたいモードを醸し出してしまい二万円の言い値で買わされてしまいます。が、冒頭に記したように大喜びで、自分だけのものにしたいとはしゃぎまわるのです。二万円の内小暮実千代が手数料として8千円を取り、残りの1万2千円が佐久間良子の手に渡る。

するとうつむき加減だった佐久間良子の態度が豹変します。

田舎でおそらく恋仲だった河原崎長一郎に会いに行き、客として店に招き入れるようになるのです。修行僧の身で頻繁に廓に通えるはずもなく、実は玉代は佐久間良子が出しているのです。

ここから話はどんどんつまらなくなっていき、先に記したように河原崎長一郎の金閣放火に至るサスペンスが忙しく絡んできてもはや何が何だかわかりません。

先輩娼妓で、佐久間良子の身を案じつつ短歌を詠む岩崎加根子が素敵です。/疲れたる瞳にあはき朝方の花を呉れたる人の名を知らず/

神保町シアター 文学と恋愛――文豪たちが描いた「恋ごころ」の情景 にて
デニロ

デニロ