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ふたりのベロニカの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

クシシュトフ・キエシロフスキー監督作。

【ストーリー】
ポーランドに暮らす女性ベロニカ(イレーヌ・ジャコブ)は音楽の才能を持っている。オーディションに合格した彼女は合唱団で歌い始める。一方、フランスにはポーランドのベロニカと同年月日に生まれ、同じ容姿、音楽の才能も同じというもう一人のベロニカがいた・・・。

予想に反して抽象的で難解な映画だった。
ストーリーは分かりやすいけど、メタファーが劇中多く散りばめられているのが特徴。

フランスのベロニカが観劇した人形劇で、女性人形がサナギから蝶に生まれ変わるシーンでは、ポーランドのベロニカの死によってフランスのベロニカが新しい生命(生きる希望)を授かったことを意味しているように思えた。フランスのベロニカは音楽の才能がありながらも、何故か突然音楽のレッスンの中止を申し出る。また、フランスのベロニカは良く知りもしない男と寝てしまうような女性だ。ポーランドのベロニカと較べ、生きることに確固たる意志が無く、どこか自信も無いようだった。
他にも、フランスのベロニカに送られてきた一本の紐は心臓の鼓動のように見える。ベロニカがピンと紐を伸ばす場面では、ポーランドのベロニカに死が訪れたことを意味しているようだった。

絶望に近いフランスのベロニカに訪れる救済。それはポーランドのベロニカの死によってもたらされる。未来への希望に満ちながら息絶えたポーランドのベロニカが、もう一人のベロニカを絶望の淵から救い出してくれたのだ。希望だけの人生なんて有り得ないし、その逆に絶望だけの人生もまた有り得ない。ポーランドのベロニカの死は必然だったのではないだろうか。希望と絶望。ベロニカとベロニカ。明確に分かれて生きてきた二人に初めて調和がもたらされたのだと思う。
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