とうじ

パララックス・ビューのとうじのレビュー・感想・評価

パララックス・ビュー(1974年製作の映画)
5.0
陰謀論的恐怖とパラノイアを原動力に駆動する007的アクション映画。
陰謀論者が感じる不安を、根本的に頭がおかしいことの副作用として片付け、断絶するのは、陰謀論を事実だとして固執することくらい危険な事だと思うし、本作は割とみんな見ておくべきだと思う。
映し出されているような事態に「絶対にならない」とは言い切れないところが不気味な本作は、その点において陰謀論者達の根底に共通する不安と孤独を効果的に実感させてくれる。
不条理との肉薄した戦いに憔悴しながらもがき続ける苦しみや痛みは、不条理の中に組み込まれる事(現実的に言えば死ぬ事)でしか解決されない。しかし、そのような事態こそがめちゃくちゃ怖いのであって、そこから逃げ続けたいからこそ戦い続ける、という陰謀論者の辛い円環的構造を的確に描く大傑作。
本作の表層の下に埋もれている物語においては、陰謀が本当か本当でないのかは関係ないのである。
ゴードンウィリスの撮影が素晴らしいのはいうまでもない。
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