アランスミシー

ノスフェラトゥのアランスミシーのレビュー・感想・評価

ノスフェラトゥ(1978年製作の映画)
5.0
1914〜1918年に勃発した第一次大戦を暗示して作られた1922年のノスフェラトゥに対して
はたまた再びドイツという国家ぐるみで起きてしまった1939〜1945年の過ち第二次大戦を暗示して作られた今作。そんなドイツの負の歴史の語り部として、ムルナウの後任として任を果たしたのはニュージャーマンシネマ3騎手の1人ヘルツォーク

《寓喩》安全志向→挑戦志向
ノスフェラトゥ=ヒトラー
吸血鬼=国民の血肉を自分の欲に駆り立てられて貪るナチス党幹部(保守)
首の噛み跡=ナチス紋章=鉤十字
ネズミ=ナチス党宣伝部
柩=各都市ナチス党支部
ジプシー(ロマ族)=ナチス残虐史における同じく迫害の対象であったユダヤ人も含めた被害者の意
ペスト=第一次大戦の敗北により負った負債&世界恐慌による経済的衰退

「(首の噛み跡を見て)ペストではない」
=これは世界恐慌による市民の死ではなく、ナチズムという間違った支配政治による市民の死だ!という訴え

死病という名の決して抗えない国家衰退の病を患ったにも関わらず、社会変革や政治刷新ではなく、ナショナリズムを継続して生き延びようとする(保守への)欲深さが呼び覚ましてしまった地獄の果ての城に眠る怪物ノスフェラトゥ=ヒトラー

そう考えると指輪物語のトールキンは間違いなくムルナウ版ノスフェラトゥの影響受けてるよな

ラストは市民が死(国家衰退&変革)を受け入れた事によってノスフェラトゥは死滅、しかしナチズムの継承者は未だ密かに生き延びているという恐ろしいエンディング


催眠にかけられたかのように舵輪に巻き付けられた船長と、街に入港して来た瞬間の船の先首の不気味さがえげつない。ヘルツォークのあの技は毎度圧巻

この影響でブルーノガンツが『ヒトラー最期の12日間』でヒトラー演じてるの感慨深いな