ねこじた

奇跡の海のねこじたのレビュー・感想・評価

奇跡の海(1996年製作の映画)
4.3
トリアーが入信した頃に作られた初期の作品。
教会が舞台に使われ宗教観が強くも、保守的暴力を振るう教会を完全批判する拘り方が面白い。
全編、手持ちカメラで撮影、ドキュメンタリーさながらリアリズムを突きつけて来るが、チャプターごとに、流れる70年代のメロディアスロックがエモくてプチ休憩出来る。

恋は洗脳で、奇跡を起こす。
2人にしか理解出来ない異質な関係になるほど、その恋愛力は強くなると思う。そのセオリーをトリアーが料理したら、こんなラブストーリーになる。
真実の愛なんて、実はよく解らないが、独創的で誰とも被らない愛の表現をするという彼のやり方が興味深い。

エミリーワトソンの、この世にそぐわない神秘的な眼差しとの至近距離に思わず狂わされそうになる。全て与えるのがベスの愛。他人から見たら犠牲や地獄でも、当人にとっては愛の仕草。

鐘の無い傑作な教会で愛を誓い一緒になった2人に与えられた奇跡の結末。
少々、派手で虚飾もファンタジーも暴走してるが、トリアーらしくて、可愛い。
神は、実際、与えもし奪いもする、サディスティックやなと、いつも思う。
ねこじた

ねこじた