おこのみやき

奇跡の海のおこのみやきのレビュー・感想・評価

奇跡の海(1996年製作の映画)
3.8
信仰と愛という陳腐とも思えるテーマをも唯一無二の表現に昇華させる脚本と演出。

幸せになれない女性主人公と彼女を見捨てず支えようとする友達/親戚という構図は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と共通している。この構図には何か象徴的な意味があるのだろうか。

最初、ベスは精神病患者のようには見えず、夫の乗る飛行機に向かって泣き叫んでいるのに対してドドが怒るのは不当だと思っていた。しかし、次第にドドと同じように「ベスを早く精神病棟に入れなくては」と感じるようになった。そのようなベスを信じられない思いが結果的にベスを追い込んだのかもしれない。(しかし、彼女を止めることは必要だったと思う)

「鬱映画」と称されることの多いラース・フォン・トリアー作品だが、監督自身が鬱のことを分かりやすく悪いもののとして描くことも、良いものとして描こうともしていないのが分かる。暗い映画であることは確かだが。