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荒野の決闘のnowstickのレビュー・感想・評価

荒野の決闘(1946年製作の映画)
3.6
善悪の概念が桃太郎ぐらい単純化されていて、感情移入できなかった。
「何でこんな暴力的な保安官を無駄に美化してるんだ?」と思って見ていたら、本作の主人公ワイアットアープは実在の人物で、監督のジョンフォードとは知り合いだったらしい。
ワイアットアープは保安官としては暴力的すぎて、職を追われて、晩年はハリウッドで西部劇の時代考証や剣劇指導的な仕事をしていたらしい。
そこで知り合った映画関係者に対して、自分の過去の話を美化しまくって喋り、映画の企画として売り込んだ。それを真に受けたジョンフォードが本作を作ったんだろう。

ジョンフォードほどキャリアを通じて思想が変わっていった映画監督は、かなり珍しいと思う。1924年公開のアイアンホースではインディアンを悪役としてアメリカ建国神話を描いている一方、1964年公開のシャイアンでは白人に追われるシャイアン族の悲劇を描いている。そういった点では1946年公開の本作は思想的にはニュートラルで、それが作品の桃太郎的な世界観に拍車をかけているのだろう。
本作が好きな人はその世界観を王道と呼ぶんだろうが、個人的には何にも無い映画という印象になってしまった。
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