木蘭

怪猫トルコ風呂の木蘭のレビュー・感想・評価

怪猫トルコ風呂(1975年製作の映画)
3.8
 怪談とポルノ、サイケと怨念、魔界とヤクザ...東映娯楽映画の全てと限界が僅か81分に詰まった奇蹟の一本。

 昭和33年の公娼廃止に伴いソープランドに衣替えした吉原遊郭を舞台にした怪談・化け猫物ポルノ。

 序盤は、昭和女残酷譚を東映お得意のヤクザ物風の色合いで描きながら、撮影当時(1975年)のサイケデリックな色彩と音楽がスパイスとなって、なかなか魅せてくれる。
 ところが、中盤に室田日出男演じるヤクザ者が、騙した愛人の妹を手込めにするシーンから一気に撮り方がホラー映画に!遊郭の女将と組んだヤクザ者が、次々と周りの人間を毒牙に掛けていくのをスラッシャーばりのゴア描写も交えて描いていく。
 終盤、遂に化け猫が躍り出るや異界時代劇化したソープランドは殺戮の舞台に・・・。

 もう色々と天こ盛り。
 『仁義なき戦い』あたりの実録シリーズから、『魔界転生』『柳生一族の陰謀』あたりのファンタスティックな時代劇をポルノで繋ぐという・・・東映の1970年代の歴史を総ざらいというか、ぎゅぎゅっと濃縮した様な映画になっているのは凄い・・・凄いけど、まぁ無茶もある・・・あるのだが、そこは力業で貫き通すのは素晴らしい。
 結構、茫然自失で「終」の字を見送った。

 特筆すべきは元女郎の雪乃を演じる谷ナオミ。
 人形浄瑠璃みたいな顔と言い、土臭い女優だな・・・と何故に人気があるのか不思議だったが、なるほど納得。
 スタイルが抜群に良いし、メイク次第で実は洋装の方が似合うんじゃないかな?という顔立ちだし、演技も上手い。
 終始、室田日出男と共に大熱演で、大変に魅力的な女優さんでした。

 それと雪乃の妹を演じる大原(上原)美佐も、初めはどこから掘ってきたんだ、こんな芋娘は?という有様だったのに、姉のヒモに手込めにされてから豹変していく姿は見事でしたよ。パチパチ。

 ただ、山城新伍らが出てくるソープのシーンだけ、何故コメディ調にするのか・・・あれは蛇足。
 それと化け猫のデザインは何とか成らなかったのか?谷ナオミはカラーコンタクト(当時の目に負担がかかるタイプ)まで入れて大熱演しているのに。

 取り敢えず雪乃の愛猫・黒猫のクロちゃん(途中一瞬、演じる猫が変わってないか?)が可愛かったです。
 人を襲うシーンもホッコリしちゃった。
木蘭

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