もこもも

仕立て屋の恋のもこもものレビュー・感想・評価

仕立て屋の恋(1989年製作の映画)
4.2
向かいの建物の美しい女性に恋心を抱いた孤独な中年男性の悲劇を描いた作品

堪らなく胸が苦しい...
死ぬほど切ない気持ちになる...
だって全てが一方通行やったから...
最初は性欲の為とも思ったけど、
中盤で恋していることを知り、
最後に愛してることを知る
その美しい愛と悲しい結末に
とてつもない大きな余韻が残った
『髪結いの亭主』でもそうやったけど
パトリス・ルコント監督の作品は
普通なら変態で片付けられそうな事が
上品で美しいものやと感じさせられる

いつも同じ音楽をかけて
同じジャケットを羽織って、
若く美しい女性の部屋を覗く
アリスに気付かれても部屋を
覗き続けるイールは恐怖を覚えたし、
サイコパスなのかとすら思わされたけど
不思議なことに中盤から終盤にかけて
純愛で魅力的な人やと感じさせられた

アリスに覗いてることを知られて
イールの部屋に入ってきた時の
怖がられると悲しいってセリフに
普通は怖がるに決まってるやんって思ったけど
見られることは嬉しいって言うアリスも
なかなか変わった人やと思ってたら、
なるほど、全ては恋人のためやってんな...
アリスとしては好きじゃないけど、
サンドリーヌ・ボネールの魅力に惹かれた

2人で食事した後の展望台のシーンも
電車で手を握られた時も切ないな
ボクシングのシーンも引きつけられる
アリスを愛しているから守る為に
国外へ行く誘いを断られ家に帰った時の
悲しすぎる展開に言葉が出なかった
自分から自分は犯人って言うのかなって
思ってたらアリスになすりつけられるなんて...
アリスがイールのことを好きにならへんのは
納得できることやけどこうするなんて...
アリスに向けた尊い言葉が切なく
刑事へ向けた手紙に胸が引き裂かれる
悲しさと切なさと大きな余韻を感じる中での
わずかな街の騒音だけのエンドロールが沁みた

「笑うだろうが
 君を少しも恨んでいない
 死ぬほど切ないだけだ
 でもかまわない、君は喜びをくれた」
もこもも

もこもも