不在

エレニの旅の不在のレビュー・感想・評価

エレニの旅(2004年製作の映画)
4.8
故郷を失った人間は、一生難民になってしまう。
新たな土地で安寧な暮らしを手に入れようとも、その事実は変わらない。
祖国とは一体何なのか。
所詮は目に見えない線によって作られた概念に過ぎない。
自然に逆らい、人間が勝手に引いた線はやがて国家という囲いになり、その線を跨いだ争いが生まれ、遂には誰かの故郷が滅びる。
人間の寄る辺である祖国とは、そんな脆弱なものなのか。
恐らく本当の祖国とは、生まれた国でも育った国でもなく、そこが自分の居場所だと思える所であり、国境など関係ないのだ。

海や川など、美しいものが人々を断絶する。
祈りや救いなどない、残酷な映画だ。
不在

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