あまのうずめ

息子のあまのうずめのレビュー・感想・評価

息子(1991年製作の映画)
3.8
東京の居酒屋のホールで働く次男哲夫は母の一周忌で岩手に帰る。法要が終わった実家では一人で暮らす父昭男の今後についての話題になる。長男タダシは東京に呼ぶつもりだと言うが、昭男は岩手で家を守ると言って聞かない。

▶︎椎名誠の原作を映画化して、その一・母の一周忌、その二・息子の恋、その三・父の上京と章立てされているのは椎名っぽさが出ている。

原作は椎名誠だが、これは山田洋次版の「東京物語」だ。全て広角で撮られているのも小津版と同じで小津安二郎へのオマージュに見えた。山田版を撮る為に逆に椎名誠の原作を選んだのではと邪推する。

若い頃は家族の為に出稼ぎにも出て、岩手で細々と農業を続ける父と、父を東京に引き取ろうとする長男夫婦の姿を通し現代問題を提示しながら、次男の新たな出発に希望を持たせるラストはいかにも山田洋次っぽいが、そのマジックにやられて心地良い気分になった。

父役の三國連太郎、次男役の永瀬正敏の演技も秀逸で、今は亡きいかりや長介、田中邦衛、音無美紀子の姿に思いを馳せられた。