てつこてつ

魚と寝る女のてつこてつのレビュー・感想・評価

魚と寝る女(2000年製作の映画)
3.5
うわあ、これはこれまで見てきたキム・ギドク監督作品の中でも、遺作「人間の時間」と並んで嫌いな人は全く受け付けることができないであろう怪作だなあ。

個人的には、やはり、監督の強い意思を感じられる作品にはどこか惹かれてしまうので最後まで見ることが出来たけれど、R-15設定であるのは、エロ描写というよりも、むしろ動物虐待や中盤以降の釣り針とかグロ描写に引っかかっているのかと・・。下手なホラー映画よりも見ていてキツい!と感じるシーン多々あり。

全編を通して一言も台詞を発さない釣り池の管理人であるヒロインを演じたソ・ジョンの存在感は圧倒的。「リトル・マーメイド」や「オンディーヌ」で描かれる純真な人魚姫や水の精霊のアンチテーゼ的なキャラクター設定は、むしろ、男を惑わす邪悪なセイレーンやローレライに近い。

鱗のごとくボディラインにピッタリと合ったタイトスカートや長い髪は湖から上がった際には、まさに人魚・・もとい、セイレーンやローレライのイメージそのもの。

彼女が偏執に近い一方的な愛情を注ぐ釣り客を演じたキム・ユソクという俳優も、なかなかの好演。でも、何故に彼が自殺願望を秘めているのかは、数秒のフラッシュバックシーンを挟んだだけではさすがに分からずストーリーを読んで初めて納得。あまりにも唐突過ぎるエンディングも含めて、キム・ギドクと言えども、さすがにこの作品は視聴者に解釈を投げっぱなしにした感も否めない。

それでも、90分間たっぷりと監督ならではの世界観に浸れたので、個人的にはまあ満足かな。湖上の釣りハウスという設定自体どこか寓話的だし雰囲気が凄くある。

ただし、この邦題・・掴みとしては有りだけど本質的に間違っているね。
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