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魚と寝る女のhasseのレビュー・感想・評価

魚と寝る女(2000年製作の映画)
4.1
演出5
演技5
脚本4
撮影5
音楽4
技術3
好み3
インスピレーション4

男と女の間には、孤独の渇望と寂しさへの不安と恐怖、自殺願望と生きる希望、極めてアンビヴァレントな情念が渦巻いていて、それらの行き場のない怨とエネルギーがクラッシュして唐突なセックスとして表にあらわれる。

男はいきのいい魚を釣っては刃物を振り下ろしめった切りにする。だが、肉片の一部を切り取られた魚の真上に刃物を振り上げた時、その手は止まり、顔を覆って泣き出す。
傷ついた魚が自分と重なったのかもしれない。それを悟ったように女が優しくバックハグする。
後日、男が何もかも嫌になって出ていこうとすると、女が自傷して(釣り針を自分の陰部へ…めちゃくちゃ痛々しくトラウマレベル)男に介抱される。女は自ら傷つくことであの魚になり、男と同じ立ち位置へと降りていく。ファムファタル的な女が男の生殺与奪を握り監視する(ヤンデレ気味の愛の)スリラーは終わり、とてもシンプルな恋愛映画がここから始まる。

低予算で編集が粗いところがいくつかあるけれど、男がブランコのオモチャを作って湖の向こうの女を見ると(遠すぎて実際は点でしか見えないが)、ブランコに乗った女のアップのショットに接続されるのはうまい。空間的距離を軽々と飛び越えて男と女の心が通じあう、これぞ映画の醍醐味という素敵なシーン。
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