半兵衛

銃殺の半兵衛のレビュー・感想・評価

銃殺(1964年製作の映画)
4.0
人殺しという社会の倫理に反した行為がまかり通る戦争で人間の罪を裁く裁判をおこなう不条理。しかもその罪は家族が恋しくなったための単なる脱走罪なのに、建前論にこだわる上層部はちゃんと調べもせず主人公を重罪人扱いししまいには面倒臭いとばかりに銃殺してしまうことでその不条理と戦争の醜い内面が一層浮かび上がる。

脱走罪に問われた男を弁護する上官役をダーク・ボガードが演じているが、常に冷静で忠実に任務を守りつつも人間性を忘れず彼を何とか戦争の被害から救おうとする複雑な人間像を見事に表現していた。

ロージー監督のいびつな作風がドラマのスタイルとマッチしていて、違和感なく鑑賞することができた。簡易な軍事裁判とネズミ退治を重ね合わせたり、冒頭でのどぶ演出がラストでの処刑場面に繋がる演出が見事。でも一番凄いのは戦闘シーンを一切出さず、狭苦しい兵舎だけで戦場の狂気を炙り出していること。
半兵衛

半兵衛