みかんぼうや

プロヴァンス物語 マルセルの夏のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

4.0
“心が豊かになる映画”とは、こういう作品のことを言うのだろう、と思わずにはいられない、家族からの、そして家族への愛情に溢れた美しい映画。原作小説は執筆者マルセル・パニョルの自伝的作品ということだが、温かい大人に囲まれ、こんなにも美しく爽やかで、幸せな少年時代の夏休みを過ごした人間がいたのか!と思うほど、最初から最後まで温かい気持ちが絶えることのない気持ちのいい良作。

いわゆる「僕の夏休み」的映画で、はっきり言って、約2時間、映画らしいフックとなる事件は何も起きない。感動や泣かせるエピソードもほとんどない。主人公マルセル少年の出生と小学生時代の夏休みの思い出を延々と描いただけ。たったそれだけなのに、南フランスの美しい街並みや自然、終始感じ続けられるノスタルジックな雰囲気(どこか「ニュー・シネマ・パラダイス」の序盤の少年期のワクワク感を思い出させる)も相まって、ただひたすらに2時間が本当に心地良い。南フランスのプロヴァンス地方、行きたい海外の場所最上位に一気に踊り出るほどの素敵な場所!

マルセルという人物は自分の人生と家族を本当に愛しているのだろうな、と考えるとそれだけで何か幸せな気持ちになれる。本作は、父への愛情と敬意が常にその物語の主軸にあったが、続編は本作でも登場した母への想いが中心になるようで、こちらもとても楽しみ。
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