福福吉吉

蝉しぐれの福福吉吉のレビュー・感想・評価

蝉しぐれ(2005年製作の映画)
3.5
牧文四郎は仲間たちと剣術道場で鍛錬しながら、隣家のふくとも親しくしており、充実した毎日を送っていた。ある日、父の牧助左衛門(緒形拳)が藩主の世継ぎ争いに巻き込まれ、切腹になり反逆者の息子として酷い目に遭う。また、ふくが江戸に行ってしまい、会えなくなった。
時は流れ、文四郎(市川染五郎)は父の仇である里村左内により、藩主の側室となったお福(木村佳乃)の子をさらってくるよう命じられてしまう。藩主の世継ぎ争いに巻き込まれた文四郎は、少年時代の仲間と共にある行動に打って出る。

江戸時代という背景から身分や言葉遣いが特殊であるが、文四郎の生き様を少年時代と成人後に分けて丁寧に描いていて、文四郎の心の動きが画面から伝わってくるので、理解しにくい部分は少ないと思います。

少年時代の文四郎(石田卓也)は心通わせる友人たちのやりとり、ふくとのぎこちないやり取り、父・助左衛門への想いが上手く描かれていて、心優しさと勇気を持ち合わせた好青年の印象を受けました。また、ふく(佐津川愛美)も文四郎への好意が伝わってきました。父の遺体を誰からも助けられず文四郎一人で運ぶ中、ふくが助けにやってくるシーンはとても良かったです。

成人後の文四郎は地味で大変な仕事も真剣に取り組む真面目さと高潔さを持っていることがよく分かりました。憎き里村佐内からの命令に対する文四郎の行動はとても勇ましくカッコ良かったです。文四郎が刺客たちとの斬り合いになって、初めて人を斬ることに戸惑いながら行った太刀さばきは不格好ながら必死さが伝わってきました。

ただ、本作についてどうしても納得できない部分があって、成人後の文四郎の描写において重要な役になる親友の二人が今田耕司とふかわりょうというキャスティングはどうかと思いました。二人の演技が悪いというわけでないのですが、時代劇で命がけで文四郎を救う役目はしっかりとした俳優を使って欲しかったです。どう観ても二人が作品から浮いていました。

全体としてはなかなか面白かったと思います。
成人後の文四郎とお福の邂逅は暖かくて、そして切なくてとても心に伝わってきて良かったと思います。
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