日本返還直前の沖縄の人々の思いを琉球の表現で描いたファンタジー。われわれは日本人でもアメリカ人でもない、琉球人であると、琉球の神話や民話の世界をまとって表しています。
皆、琉球の言葉で話すので、大和言葉(標準語)の字幕が入っています。
ウンタマギルー(運玉義留):沖縄の運玉の森で妖精によって人間を超えた存在に変えてもらったギルーという義賊の男のこと。実際の伝承です。
小林薫がギルー。戸川純がその妹で霊媒師でもある娼婦チルー。戸川純の(沖縄の)歌がとてもうまいです。
ギルーが愛して交わったマレーは実は豚の化身だった。神の怒りを避けるために運玉の森に入る。
チルーは子やぎと共に娼館で暮らし、動物占いをする。
土を食べる人々(飢餓)。
黒糖を欲しがる森の(おじさん)妖精。
↑ これだけでも想像力が広がるでしょう。
サトウキビから砂糖を作る親方から搾取され、アメリカの統治下で自由になれない。沖縄人は琉球人であり、日本人にはなれない。琉球は琉球として独立したいと、ギルーは義賊になるのですが…
社会風刺を唄うバンドが劇中にはさまり、ほんわかした雰囲気の中で厳しい沖縄の状況が伝わってきます。
沖縄出身の高嶺剛監督は映像詩人ジョナス・メカス監督の影響を受けていたとのこと。映像詩で描く他の作品も観てみたいです。不思議な魅力的な作風でとても好みでした。
「本当は返還ではなく、独立したかった」という沖縄の人々の思いを表現するのは勇気がいる。それを神話で表していて、素晴らしいと思いました。
🏝️HidekiIshimotoさん、素晴らしい作品をご紹介ありがとうございました。