喜連川風連

MIND GAME マインド・ゲームの喜連川風連のレビュー・感想・評価

MIND GAME マインド・ゲーム(2004年製作の映画)
4.9
湯浅正明による初期衝動。バンドのファーストアルバムのような熱量。そして人類愛。鳥肌が止まらなかった。

平成人が追体験するロビンソンクルーソー。臨死と生活を描くことで逆説的に、生きる気力の湧く映画になっている。

現代のあらゆる問題は、自分の頭の問題(マインドゲーム)なのだ。まずは生き残る・食べていくという外の課題に集中し、全力で生きる。生きてさえいてれば、可能性に満ち溢れている。なんと、人間愛に溢れた映画か。

しかし、彼らが生きようともがく陰で、虫や魚を踏みつぶすカットが挟まれ、何かを犠牲にして生きていることを示している。

円環の理。ニーチェ的永劫回帰を乗り越えた超人がまさに主人公。あのヤクザ二人は、パルプフィクションだろうか?

時折、実写を挟み、視聴者を決して空想に導かない。現実の延長線上にこの物語があることを示唆する。

現実逃避の手段として存在していたゲームやアニメとして消費させない覚悟。エヴァのairのようだ。

ヒーローに憧れていた子どもも大人になる。だが、ヒーローのような夢見る人を救うのではなく、生きる渇望や未来の可能性で救おうとする。素晴らしい。

毎度炸裂する湯浅アングルがたまらん。実相寺アングルを彷彿とさせる。何かを手前にかませたり、歪ませたり。作画枚数を増やさなくとも、画角とカットの面白さで魅せる。まるで実写映画のよう。枚数が少なくても最高に面白い。

セックスや告白や心情を徹底的に映像で表現し、説明しない。たしかにセックスは蒸気機関車のようであるし、告白は花火のようだ。

スタジオ4°C伝統の波や海の作画も素晴らしい。

流行る自殺。凶悪殺人。新興宗教。不況。パラパラ。ゲームへの逃避。あらゆる90年代的なものを乗り越えた先の狂乱のワールドカップ2002。 90年代の絶望を乗り越えた先の生命の躍動を描く。

生涯ベストに近い快作。平成日本映画の最高傑作ではないか?Filmarksのフィルム上映に感謝。
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