クロスケ

MIND GAME マインド・ゲームのクロスケのレビュー・感想・評価

MIND GAME マインド・ゲーム(2004年製作の映画)
4.8
【再鑑賞】
目まぐるしく展開する奔放なイマジネーションの応酬に、最初から最後まで目が離せません。
初めて観たときは、アニメーションという制作上、どうしても作為が介入してしまう映像ジャンルにおいて、ここまで感覚的な表現が可能なのかと驚きました。

物語の構成は多少荒削りですが、本作に関してはセオリーを覆す大胆さを評価すべきでしょう。
圧倒的な映像の力で劇場公開に耐え得るエンターテイメントに挑んだ極めて野心的な作品です。

アニメーションやCGならでは、というよりそれでしか実現できない自在なカメラワークで斬新な視覚体験を堪能できますし、おもちゃ箱を引っくり返したかのようなカラフルなアートワークも秀逸。スタイルの異なる絵(そこには実写映像のトレースも含まれる)を渾然一体にして、怒涛のクライマックスまで持っていく力技にも唸りました。

その中でも特に魅力的なのは、キャラクターの描線が持つたおやかさです。
写実的なキャラクターがデフォルメされたアクションを見せる瞬間の、躍動感のある線が素晴らしい。この動く絵のワクワク感は、殆どディズニーの域に達していると思いましたし、西とミョンのラブシーンなどは、虫プロの『千夜一夜物語』や『クレオパトラ』を彷彿とさせます。線そのものに官能性が息づいているとでも言いましょうか。

新しい技術を積極的に採用しながら、アニメーションの原始的な魅力をしっかり自覚しているところなどは、流石、劇場版『クレヨンしんちゃん』などに携わり、天才アニメーターの名を欲しいままにしていた湯浅政明といったところです。
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