ごじゃ

MIND GAME マインド・ゲームのごじゃのネタバレレビュー・内容・結末

MIND GAME マインド・ゲーム(2004年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

イマジネーションの力を存分に発揮した作品。
人間を描くのではなく、人間の内側にあるエネルギーを捉えて描き出しているように感じた。それゆえにキャラクター達は人間の形、空間を逸脱する。時には空間を歪ませるだけではなく、空間そのものから離脱したような、精神世界のような画面も展開される。
自分が一番印象に残っている場面はクライマックス、クジラから脱出した後の街の風景だ。それまでの空間とは全く違う、整った詳細な街が描かれるのである。湯浅監督は、キャラクターが興味を持っているものは詳細に絵や写真で描き、そうで無いものは情報量の少ないものや、大きく歪んだ線で描いている、と述べている。実際、序盤に描かれる灰色の雑で歪んだ街とは対照的だ。つまり、クジラの腹の中で主人公の世界に対する見方が全く変わったことが見て取れるのである。クジラの腹の中では、主人公達が自分を解放していく様が、鮮やかな色使いや、人の形に縛られない自由な動きで描かれていく。そこで自分たちが外の世界で諦めていた(やり残していた)ことに気づく。そしてそれと同時にそれまではなんとも思っていなかった世界が輝きだすのである。今の閉じた世界で自分たちが自分たちの時間を生きていたように、外の世界ではさまざまな人たちがさまざまなことを考えてそれぞれの時間を生きている。そう気づき、今までの世界観が一変する。世界がグッと身近になる。文字通り、世界の解像度が上がるのである。灰色の歪んだ街並みから、色鮮やかで端整な街並みに。世界は何も変わってはいない。変わったのは主人公の「マインド」それだけである。
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