マヒロ

MIND GAME マインド・ゲームのマヒロのレビュー・感想・評価

MIND GAME マインド・ゲーム(2004年製作の映画)
5.0
これはとんでもなかった。アニメ表現の極北というか、アニメ見るならこういうものを見たいよなというものを見てしまったような衝撃を受けた。

漫画家を目指しながらもこれといった行動を起こさずに燻っていた男・西が、偶然に偶然が重なり突然命を落としてしまうが……というお話なんだけど、映画が進むにつれて、まるで思っても見なかった方向に話がぶっ飛んでいく。根底にあるのは、しょうもない人生を送っていた西が自分の生き様に向き直り、立ち直っていくという直球シンプルなものなはずが、肉付けが余りにもハチャメチャすぎて果てしなく底の見えないものになっている。

監督の湯浅政明という方は『クレヨンしんちゃん』のアニメでずっと製作を務めている人とかで、ギャグのテンポとかノリが確かにまんま『クレしん』なところが幾つかあるし(神様と西の会話とかまさにそれ)、『ヘンダーランド』のようなちょっと不気味なタイプの作品の雰囲気に似たものも感じさせて、あの作品にはこの人の血肉が色濃く反映されてるんだなぁと感じた。
ただ、この映画が特異なのがその「ちょっと不気味」が1時間40分延々と続くというところ。違う例えをすると『ダンボ』のピンクの象のシーンが全編にわたって繰り広げられるというとわかる人には分かると思うけど、とにかくそんな感じ。

ギャグアニメやってる人らしい整いすぎていない絵も魅力的で、極端にパースが効いていたり色味がめちゃくちゃになったり、いきなり実写映像が紛れ込んだりと、最早アートフィルムの域に達しているといっても過言ではない。ラストの畳み掛けなんかは『2001年宇宙の旅』のトリップシーンを思い起こさせる凄まじさで、見ていて口が開きっぱなしになってしまった。

とにかく自分の語彙力だけではとても凄さを表しきれない素晴らしい作品なので、何も言わずに観ていただきたい。

(2017.31)
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