イカのおすし

キラー・エリートのイカのおすしのレビュー・感想・評価

キラー・エリート(1975年製作の映画)
5.0
「ペキンパー監督の失敗作」と凹られているのをよく目にする本作。たしかに「わらの犬」や「ガルシアの首」なんかと比べると雑で安っぽいB級感は否めず、ペキンパーファンが納得できないのも致し方がない。が、ハードルを上げず気軽に鑑賞すれば見どころの多い娯楽作として楽しめるのではないだろうか。個人的にはかなりのお気に入りである。

スパイ映画風のシリアスな冒頭シーンから陽気なバディ物のような軽いノリへ(それを演じるのがゴッドファーザーのソニーとトムというのが味わい深い)、そこから唐突に訪れる裏切りを契機とした復讐劇への流れ、さらにはパチモノ丸出しなニンジャ軍団が登場する強引な展開といった具合にまったく節操ないが、それこそが本作の珍妙な味わいで、B級グルメのフルコースさながら卑俗な満腹感が得られる。

様々な要素が詰めこまれた映画ではあるが、カーチェイスや銃撃戦はさすがペキンパー監督、迫力満点で作品をピシっとシメている。また街中での激しい銃撃戦のあとに敵側が「今回は負けだった」と武器をバッグにしまいながら反省するシーンは新鮮で笑える。

見どころを一つ一つ挙げたらキリがないが、銃の名手ジェロームを演じるボー・ホプキンスがとりわけ素晴らしい。いつもニヤけた口数の少ない男で銃の扱いは超一流だがすぐに人を撃ってしまうせいで組織も扱いかねているヤバい人物、という設定。さほど出番は多くないが、要所要所でイイ味を出しまくっていて、どこか憎めない彼のシーンを繰り返し見たい一心でブルーレイを買ってしまったほどである。鎮静剤をがぶっと飲む、あの辺りのイイヤツぶりはホント最高。

本作は当初、銃撃戦で死んだと思ったボー・ホプキンスが実は生きていてヒョッコリ現れたところを「なんだよぉ~!」とジェームズ・カーンが海へ突き落としてジ・エンド、というズッコケな終幕が用意されていたが、さすがにそれはヘボいということでボツになったそうだ。自分としてはその方が100倍良かったので残念ではある。