阿房門王仁太郎

キラー・エリートの阿房門王仁太郎のレビュー・感想・評価

キラー・エリート(1975年製作の映画)
4.0
 ペキンパーの映画を通してみたのは初めてだが、「暴力」の本質である不随意性と不可逆性の不快感が描かれている点で北野映画の暴力描写の源泉を見た(たけし自体はよりロマンチストであり静謐ながら結構ウェットなのがペキンパーではもっとやるせなく渇いてる)。
 その暴力の合間に会話や謎の終盤の果し合いとそれに至る口論が挟まれておりテンポを損なっていると見る向きもあろうが(というかそれが自然だろう)、その緩慢な生活や議論こそが暴力の発作的暴発の揺籃なのであり、その発作の発動の仕方によっては望み(復讐)を果たせない場合もある。
 結果としては、主人公は上司と言う恣意的な暴力の源泉の一つから身を引いて海原に旅立つ幕引きだがそれは或いは企業にとってはかなり強力な痛打では無かったろうか。復讐を遂げられなかった主人公が、副次的に仇を討ち殺しの稼業から身を引きどこかへ旅立つという最も平和ながら強烈な暴力で幕を閉じる(暴力の連鎖を断ち切る)というのは中々皮肉が効いた哀愁のある物ではなかろうか
阿房門王仁太郎

阿房門王仁太郎